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text:chomonju:s_chomonju069

古今著聞集 釈教第二

69 使庁の結縁経は長保元年三月十日始めて行なひて・・・

校訂本文

使庁1)の結縁経は、長保元年三月十日始めて行なひて、その後、年ごとに行なはれけるが、絶えて久しくなりにけるを、建久年中、別当兼光卿2)、かたのごとく行ひけり。

その後、建保六年五月二十日、別当顕俊卿3)、雲林院にて行ひたりけり。左佐経兼4)以下着座したりけり。このたび、初めて前右大臣公継5)を始めて、別当経たる人々に、法華経ならびに具経一巻づつ結縁せさせられたりけり。そのほか別当の沙汰にても、みづから書かれたりけり。開結二経は左佐経兼・右佐頼資6)結縁し侍りけり。尉以下は尊勝陀羅尼をぞ奉りける。みな捧げ物を具しけり。

宝治六年7)五月二十八日、別当定嗣卿8)、霊山堂にてまた行はれしは、建保の例を移されけり。古き例(ためし)のありけるとかやとて、赦(ゆる)しものなん侍りけり。また、金光明経も別当の沙汰にて添へられけり。今度、法華経品々をば詩に作らせ、金光明経の品々をは歌に詠ませられけり9)

翻刻

使庁の結縁経は長保元年三月十日始ておこなひて
其後年ことにおこなはれけるか絶て久く成にけるを
建久年中別当兼光卿かたのことくおこなひけり
そののち建保六年五月廿日別当顕俊卿雲林院にて
おこなひたりけり左佐経兼以下著座したりけり此
度はしめて前右大臣公継をはしめて別当経たる人々に
法華経并具経一巻つつ結縁せさせられたりけり其外
別当の沙汰にてもみつからかかれたりけり開結二経は
左佐経兼右佐頼資結縁し侍けり尉以下は尊勝陀羅/s65r
尼をそ奉りけるみな捧物をくしけり宝治六年五月廿
八日別当定嗣卿霊山堂にて又おこなはれしは建保
の例をうつされけりふるきためしのありけるとかや
とてゆるしものなん侍けり又金光明経も別当
の沙汰にてそへられけり今度法華経品々をは
詩につくらせ金光明経の品々をは哥によませられける/s65l

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/65

1)
検非違使庁
2)
藤原兼光
3)
藤原顕俊
4)
左衛門佐藤原経兼
5)
徳大寺公継
6)
藤原頼資
7)
宝治は三年まで。
8)
葉室定嗣
9)
「けり」は底本「ける」。諸本により訂正。
text/chomonju/s_chomonju069.txt · 最終更新: 2020/01/27 15:12 by Satoshi Nakagawa