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text:chomonju:s_chomonju093

古今著聞集 公事第四

93 いづれの年にか白馬の節会に進士の判官藤原経仲参りたりけるに・・・

校訂本文

いづれの年にか、白馬節会(あをうまのせちゑ)に、進士の判官藤原経仲参りたりけるに、雑犯ただすべき者なかりければ、力及ばで、検非違使ども退出せんとしけるに、なにがし僧正とかやの児、沓を履きながら木の股に登りて見物しけるを、経仲が下部(しもべ)をもて召し取りてただしける言葉に、「長大垂髪にて、皮の沓を履きたる、木に登りて、宮闕をうかがふ。一身をもて三つの1)犯しをなせる、しかるべしやいかん」と勘問したりける2)、時にのぞみていみじかりけり。叡感ありて、女房の衣を賜はせけりとなん。

翻刻

いつれの年にか白馬節会に進士判官藤原経仲ま
いりたりけるに雑犯たたすへきものなかりけれはちからを
よはて検非違使とも退出せんとしけるになにかし僧
正とかやの児沓をはきなから木のまたにのほりて
見物しけるを経仲か下部をもてめしとりてたたし/s81r
ける詞に長大垂髪にて皮の沓をはきたる木にのほ
りて宮闕をうかかふ一身をもて三のをかしをなせる
しかるへしや如何と勘問たりける時にのそみていみ
しかりけり叡感ありて女房の衣をたまはせけりとなん/s81l

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/81

1)
「四つの」の誤りか。
2)
「勘問したりける」は底本「勘問たりける」。文脈により補う。
text/chomonju/s_chomonju093.txt · 最終更新: 2020/01/31 23:47 by Satoshi Nakagawa