text:chomonju:s_chomonju637
古今著聞集 飲食第二十八
637 季経卿泰覚法印がもとへ瓜をつかはして・・・
校訂本文
季経卿1)、泰覚法印がもとへ瓜をつかはして、「この瓜食ひて、これが代はりには、この大般若2)書きて」とて、料紙を一両巻送りたりける返事に、
舐めみつる五つの色の味はひも黄蘗(きはだ)の紙に苦くなりぬる
同じ法印が家の例飯(れいはん)を米の飯にしたりければ、
人はみな米をぞ飯(いひ)にかしくめるこのみかしきは飯を米にす
亥(ゐ)の子餅を詠めりける、
何よりも心にぞつく亥の子餅3)貧苦(ひんく)うすなるものと思へば
木練(こね)りの柿を詠み侍りける、
霜置ける木練りの柿はおのづから含めは消ゆるものにぞありける
翻刻
季経卿泰覚法印かもとへ瓜をつかはしてこのうり くひてこれかかはりにはこの大般若かきてとて料紙 を一両巻をくりたりける返事に なめみつる五の色のあちわひもきはたのかみににかく成ぬる 同法印か家の例飯を米の飯にしたりけれは 人はみなこめをそいゐにかしくめるこのみかしきは飯をこめにす ゐの子餅をよめりける なによりも心にそつくゐの餅ひんくうすなる物とおもへは 木ねりの柿をよみ侍ける/s498l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/498
霜をけるこねりの柿はおのつからふくめはきゆる物にそ有ける/s499r
text/chomonju/s_chomonju637.txt · 最終更新: 2020/12/21 23:17 by Satoshi Nakagawa