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text:chomonju:s_chomonju679

古今著聞集 魚虫禽獣第三十

679 御堂殿儀同三司の御車に乗り具し給ひて・・・

校訂本文

御堂殿1)、儀同三司2)の御車に乗り具し給ひて、御歩(あり)きありけるに、辻をかい回りける所を、牛、ことによく引きたりければ、御堂殿3)感ぜさせ給ひて、「この牛はいづくより出で来たりけるぞ」と尋ね申されければ、儀同三司、「これは祇園へ人の誦経に参らせたりけるを、人の賜びたる」と答へ申されければ、御堂4)驚かせ給ひて、御車を召し寄せてぞ別(べち)にて帰らせ給ひける。

神物を恐れさせ給ひけるゆゑなり。

翻刻

御堂殿儀同三司の御車に乗くし給て御ありき
ありけるに辻をかひまはりける所を牛ことによく
引たりけれは御室殿感せさせ給て此牛はいつくよ
りいてきたりけるそと尋申されけれは儀同/s530l

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/530

三司これは祇園へ人の誦経にまいらせたりけるを
人のたひたるとこたへ申されけれは御室おとろか
せ給て御車をめしよせてそへちにて帰らせ給け
る神物を恐させ給ける故なり/s531r

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/531

1)
藤原道長
2)
藤原伊周
3)
「御堂殿」は底本「御室殿」。諸本により訂正。
4)
「御堂」は底本「御室」。諸本により訂正。
text/chomonju/s_chomonju679.txt · 最終更新: 2021/01/15 15:32 by Satoshi Nakagawa