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text:yomeiuji:uji153

宇治拾遺物語

第153話(巻12・第17話)鄭大尉の事

鄭大尉事

鄭大尉の事

校訂本文

今は昔、親に孝する者ありけり。朝夕に木をこりて、親を養ふ。孝養の心、空に知られぬ。

梶もなき舟に乗りて、向ひの島に行くに、朝には南の風吹きて、北の島に吹き付けつ。夕はまた舟に木をこり入れてゐたりければ、北の風吹きて、家に吹き付けつ。

かくのごとくするほどに、年ごろになりて、おほやけに聞こし召して、大臣になして召し仕はる。その名を鄭大尉1)とぞいひける。

翻刻

今はむかしおやに孝する物ありけり朝夕に木をこりて親を
やしなふ孝養の心空にしられぬ梶もなき舟に乗て向の島に/下59ウy372
行に朝には南の風ふきて北の島に吹つけつ夕は又舟に
木をこり入てゐたりけれは北の風吹て家にふきつけつかくのことく
する程に年比になりて大やけにきこしめして大臣になして
めしつかはるその名を鄭大尉とそいひける/下60オy373
1)
鄭弘
text/yomeiuji/uji153.txt · 最終更新: 2019/10/09 21:06 by Satoshi Nakagawa